『ドラゴンタトゥーの女』 あらすじと感想 リスベットという”危険でカッコイイ女性”
ドラゴンタトゥーの女 [The Girl With The Dragon Tattoo] ー2012年公開
監督:デビット・フィンチャー
主演:ダニエル・クレイグ、ルーニー・マーラ
予告編
あらすじ:
記者であるミカエルは実業家のヴェンネルストレムが政府資金を私的流用し、武器を密売しているという記事を寄稿するも、ヴェンネルストレムは記事を誤りであると主張した。ミカエルは上訴するが裁判に負けてしまう。名誉毀損であるとされ、彼は記者としての信用も財産も全て失い、会社は破産寸前に追い込まれてしまう。
そんな彼の元に、ヘンリーという実業家から是非とも直接会いたいと連絡がくる。ヘンリーは高齢のため、ミカエルが自らの足で彼のいるスウェーデンへと赴く。自分を呼んだ理由を尋ねると彼は言った。表向きではヘンリー自身の伝記を書く手伝いをしつつ、これから会う人間ーーーつまり自分の一族にまつわる暴力、強欲、窃盗を頭の切れるミカエルに是非とも徹底的に調べ上げてほしい、と。
ヘンリーの依頼は、40年も前に忽然と姿を消した一族の少女、ハリエットについてだった。40年前、毎年一族全員が集まる食事会がその年も開かれた。食事会とともに開催されるパレードを見て帰ってきたハリエットは、ヘンリーに話があると言ってきた。手が離せなかった彼は、数分後に行くから待っててくれと伝えたが、その数分間の間に彼女はどこかへと姿を消してしまったのだった。彼らは小さな島で暮らしており、唯一の陸と繋がる橋では大きな事故が起きて人が集まっていたが、彼女を見たというものはいなかった。その後警察や有志らによって捜索が行われるが彼女は見つからずじまいだった。
ヘンリーは一族の誰かが彼女を殺したのではないかと疑っていた。なぜなら、ヘンリーが誕生日を迎えるたびにハリエットが彼に送っていた白い花の絵が、彼女の失踪後も毎年の彼の誕生日に贈られてきていたからだ。ハリエットが彼の誕生日に絵を贈っていたことを知っているのは一族だけであり、だからこそ殺人犯は一族の中にいると考えていたのだった。
ミカエルはヘンリーから金銭面での援助、そしてヴェンネルストレムの武器密売を証明できるという情報を約束され、捜査に乗り出した。ヘンリーの一族と接触し、少しずつ手掛かりを集めていく彼はヴェンネルストレムの時の二の舞にならぬよう、自分の推理を確固たるものにするためにアシスタントを雇うことにする。
ヘンリーの側近とも言える、弁護士ディルクにアシスタントについて相談すると、一人心当たりがあると言う。その名はリスベット。背中に大きなドラゴンのタトゥーを彫った女。実は今回ミカエルをこの事件の捜査のために雇う際、ヘンリーとディルクはリスベットを使ってミカエルについて知る為に彼の周りを嗅ぎまわらせていたのだ。彼女は違法な手口を使う優秀なハッカーだったが、彼女が歩んできた過去は凄惨なものだったーーー。
二人が辿り着く、過去に隠された一族のおぞましい真実とは。
おすすめ度:7/10
感想(ネタバレ少しあり):
最近続編の『蜘蛛の巣を払う女』が公開されたということで書いてみました。僕は映画監督の中で、デビット・フィンチャーは上位に入ってくるほど好き(言うてそんなに映画監督知らない)なんですけども、この映画も彼独特のエグさというか暗さというか、あの雰囲気が出てて好きです。ただ、彼の他の作品の『ファイトクラブ』ほどポップでもなく、『セブン』ほど暗くもなく、実は純愛が見られる作品です。
この映画の見所は何と言ってもルーニー・マーラ演じるリスベット。耳はもちろんのこと、眉毛にも鼻にも唇にもピアス、そして乳首にまで。背中と足には大きなドラゴンのタトゥー。危険で、狂ってて、頭脳明晰。実は好きな人を想う女性らしい一面も持っている。痩せこけてまゆも剃っているが、彼女が吸うタバコは本当にセクシーでかっこいい。こんなに魅力的でカッコイイ女性はそうそう居ない。もちろんダニエル・クレイグが演じるミカエルも渋さMAXでイケオジが大好きな僕にはたまらないが、『007』のイメージが染み込み過ぎてて、「いやいや、ジェームズ・ボンドならそんな攻撃、当たんないっしょ」とか勝手に思ってしまって、”ミカエル”として認識するまで時間がかかりました。でも、彼、ジェームズ・ボンドらしさを消す為に役作りでわざわざ太ったとか。
リスベットの生活が描かれるシーンは結構辛いです。さすがデビット・フィンチャー監督、こういうシーンの惨さが半端じゃない。彼女がレイプされるシーンは流石にちょっと見てて辛かったです。それもそのはず、ここで彼女の背中につけられるアザはどうやら本物みたいです。いや、ルーニー・マーラ、すげえな。これが女優魂ってやつなんでしょうか。レイプする側の役を演じたヨリックもしばらくゲンナリしてたというほどのリアルさ。痛々しいシーンが少し続きますが、その後の彼女の報復シーンは彼女の魅力を引き出すようなえげつないものでした。おしとやかな女性はもちろんですが、強い女性というのも惹かれますね。リスベットはちょっと強すぎるっていうかもはや狂ってるけど。バイクも華麗に乗り回すからやっぱりかっこいいんですけどね。
あとストーリー以外で特筆すべきポイントといえばオープニング映像のかっこよさでしょうか。映画はもちろん終わり方がとても大事です。途中どんだけ盛り上がっても最後がグダれば台無しです。NETFRIXが作れ映画を見れば分かります。でも始まり方がかっこよければ、おおっ!この映画は期待できるぞ!となっていい意味で先入観的なものになりますからね。その点、『ドラゴンタトゥーの女』のオープニングは音楽も映像も凝ってて死ぬほどかっこいいです。ていうかデヴィット・フィンチャー監督の映画のオープニングがかっこいいのでしょうか。『ファイト・クラブ』のオープニングも何度見ても色褪せないかっこよさがありますしね。
さて、ストーリーの方ですが、原作は小説ということもあり、結構詰め込まれ過ぎ感がします。もう登場人物多過ぎ。一族多過ぎ。仕方ないけど、あまり出てこない人は印象も薄いから1回目はなかなか覚えられないです。でも展開は意外と言えるものでしょう。ハリエットという人物を追えば追うほど、彼女がなぜ消えたのか。彼女はなぜ消されたのか。そして一族の薄汚く、歪んだ価値観が浮き彫りになっていきます。ただ、よく出てくる人物は本当に何度も出てくるので見てる人によっては犯人の検討がついてしまうかもしれないです。一族の真実はぜひご自分でご覧ください!
やっぱりこの映画の見所はルーニー・マーラが演じるリスベットでしょうか。ラストシーンの彼女の哀愁漂う雰囲気は見るべきと言ってもいいでしょう。次回作の『蜘蛛の巣を払う女』ではリスベット役がクレア・フォイに変わり、監督も『ドント・ブリーズ』のフェデ・アルバレスに。デビット・フィンチャーは制作総指揮にまわってるそうですが、こちらも早く見なきゃなと思っています。だいぶアクション色強くなってたな、広告の感じだと。
筆:オリジストン
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